上杉隆の新春リテラシー講座!マスコミ利権の中核「記者クラブ問題」、世界のメディアの常識「ジャーナリズム5大原則」について徹底解説!(2018/01/06)

3ヶ月ぶりの放送になる第19回の「上杉隆のザ・リテラシー」は、「新春リテラシー講座」と題して、上杉隆が日本のメディアが抱える最大の問題である「記者クラブ問題」、そして世界のメディアの常識である「ジャーナリズム5大原則」について徹底解説しました!聞き手は宇都宮愛&真白リョウ姉妹のお二人です。


【上杉隆】
リテラシーとは、「ニュースを読み解き、精査する力」のこと。どこにそのニュースの本質があるかを見極める力。世界的にはこの「リテラシー教育」が自然に行われてますが、日本には全くありません。本日はそのリテラシー講座をお伝えしたいと思います。

まず、「日本のメディアはリテラシーも質も高くない」という現実をご覧いただきましょう。これです。世界の報道自由度ランキング。

【宇都宮愛】
鳩山政権の時が一番高くて、今はすごく低い…これは安倍さんがそのように操作してるのかなっていう認識なんですけど…。

【上杉】
昨年は72位で、OECD参加国の半分以下、もちろんG7にも入っていない…これは非常に恥ずかしいんですよ。この原因は安倍政権の安保法制やら何やらと言われていますが、違います!

小泉政権時代の2003年〜2006年あたり、37〜51位と、結構低いんです。でも、この頃には安保法制はない。憲法改正発議の国民投票法案も2006年ですから、まだないんですよ。なのになぜ低かったのか?そして(鳩山政権で)なぜ上がったのか?…簡単なんです。国境なき記者団のホームページにも書いてあります。「日本には『記者クラブ』という問題があって、日本のメディアの質が低いのは記者クラブがあるから。この制度を改善しなさい」と。2002年、2003年はOECDから直接抗議が来ています。「記者クラブ止めなさい、公開しなさい」と。

記者クラブは日本にしかありません!2003年韓国の盧武鉉政権が記者クラブ制度を廃止して開放して以来、先進国、民主主義国では日本だけなんです。だから海外でも“Kisha Kurabu”と書くんですよ。(クラブはClubではなく、Kurabu)

…このこと、知らないでしょう?こんなふうに見られてるんですよ。だから私も「これを直さないと、いつまでたっても日本はバカにされますよ」と日本を助けるために記者クラブ解放運動をやっていたんです。そしたらどうなったかというと…干されるんですね。

【真白リョウ】
壊れないんだ、記者クラブ…。

【上杉】
壊れないんですねえ。しかも記者クラブは外圧も効かない唯一の問題なんです。他のことなら日本はだいたい外圧が効くんですけどね。

国境なき記者団とFCCJは毎年抗議、OECDは2002,2003年に政府に抗議してます。なぜここまでしても変わらないか?…日本のメディアがこの問題を無視するからです。


記者クラブこそがマスコミ利権の中核!しかもこの大問題を気づかせないために隠している


【真白】
なんでそこまでして記者クラブを守りたいんですか?

【上杉】
いいとこに気づきましたねえ。…これは何かというと、利権の中核だから。つまりテレビ利権とか新聞利権などの「マスコミ利権」は第四の権力になっていることと、マスコミによって政権が左右されるじゃないですか。行政、企業も。その最大、最強の権力の中核が記者クラブなんですよ。これが大問題だということを言わせないようにするために、見せないようにしているんです。

例えば、電波。これは国民の共有の財産ですよ。だけど、記者クラブメディアだけに与えてるんです…ほとんどタダ同然で。皆さんの携帯電話からは一台ずつお金を取って、記者クラブからは取らない。

この記者クラブ問題は、オプエドでもおなじみの蟹瀬誠一さんも追求してます。そしてカレル・ヴァン・ウォルフレンさん…この人は80年代から「日本権力構造の謎」という本を出して批判しています。そして櫻井よしこさん、この人はもとは日テレの「今日の出来事」という番組をやっていたんですけども、記者クラブ問題を追求してNHKと大げんかしています。この三人、みんな意見が違うでしょ?でもみんな外国メディアの経験がある(私もそうですが)と、これがどれだけ大きな問題かがわかるんで、これを追求するんです。…だけど、みんな嫌になってやめちゃう。でも諦めないでがんばってるとどうなるかというと…干されると(笑)。

ニューヨーク・タイムズ記者時代の上杉隆

なんで記者クラブがダメなのかというと、「競争相手を同業者が排除している」カルテルだからです。どんな業種だって切磋琢磨して、新規参入があったりして、しのぎを削っている。ところが、記者クラブメディアはこの半世紀、新規参入ほぼゼロ。

【真白】
これは…テレビメディア?

【上杉】
テレビも新聞も。新規参入ないでしょ?政府に守られてるから。例えば90年代に孫正義さんがルパート・マードックさんと手を組んで、朝日新聞(テレビ朝日)を買収しようとした。そしたら、あの世界の孫正義ですら弾き飛ばされたんですよ。堀江貴文さんも2004年にフジテレビを買収しようとして弾き飛ばされた。…新規参入はできないんです。

そして2011年に地上波テレビがデジタル化される時、チャンネルを1000〜2000でも増やせるはずだったのに、蓋を開けてみれば日本だけが開放しないで、既存のテレビ局だけが10も20もチャンネルを持って、他には出さなかった。孫さんも800MHz帯をくれと言ったのに、出さなかった。それで孫さんは頭にきて海外に行っちゃったんです。堀江貴文さんもそうでしょ?

で、結局2011年に何が起こったのかというと、そのインチキ・カルテルを守った既存メディアには「お前らよくやったな。お前らは倒産させないよ」と。だから一社も倒産してないでしょ?…最大のタブーがここなんですよ。

【真白】
「大本営」が続いてるわけか…。

【上杉】
まさにその通りなんです。

〜中略〜

【上杉】
このシステムを変えるために、小さい記者クラブを一つ一つ開放しろと言っててもしょうがないので、「ど真ん中の上から行け」というのが僕のアプローチです。つまり内閣官房。この内閣官房の記者クラブが開けば、全部開くんですよ。役所は前例主義と横並びだから。

【真白】
それを鳩山さんがやったわけですか?

【上杉】
それより前の2001年、小泉政権ができた時に当時秘書官だった飯島勲さんに「記者クラブ開けてください」と頼んで、まず外国人記者を入れてもらいました。それからスポーツ紙を4紙入れました。少しずつ入れていけばみんな分かるだろうと思って。それでも大抵抗。あの支持率80%だった当時の小泉さんですら、「政権が終わるんじゃないか?」と言われるぐらい、抵抗をくらいました。

それでもなんでできたかというと「勢いのあるうちじゃないとできませんよ」と説得したんです。4月に小泉政権が成立して、5月のゴールデンウィーク明けに開けたんですが、その後に反発が来て飯島さんがその時言ったのは「保たないかもしれない」と。

【真白】
8割の支持率があってもですか?

【上杉】
それほどすごいんですよ。飯島さんには「最初の力のあるうちじゃないとできません。絶対に差し込まれます」と説得しました。2009年の鳩山政権の時に鳩山さんにも言いました…政権取る前に。

小泉政権は最初に記者クラブ開放をやって以降の5年間は、何もできませんでした。「これ以上は政権が保たない」と言うことだったので。そこで、野党に目をつけたんですよ。

鳩山政権ができる前の小沢代表、その前の岡田代表…歴代の代表全員に「記者クラブ開放してください」と言い続けました。何年間も。そして「政権取ったら、上杉さんとの約束を守ります」と言質を取った。だから鳩山さんが政権取った時に「やります」と言ったんです。その鳩山さんがザ・リテラシーに出た時に言ってたけど…「あれで政権崩れた」と言ってましたよね。要するに、「記者クラブ開放によって、メディアが全部敵に回った」と。これは世界的にはいいことだけど、日本の既得権益層、日本のリテラシーが低い人達は「記者クラブあってもいいだろう」と思っちゃうわけですね…。


20年闘っても埒があかない記者クラブ問題。突破口は「ジャーナリズムの5大原則」を読者・視聴者が身につけること!


で、こんな長い前フリで、やっとここからが本番ですよ!この記者クラブ問題を直さないと日本の未来はないです。でもそれを待っているだけじゃ僕もみなさんも年取っちゃうんで…20年やってきてもこれしか動かないんだから。そこで「自分たちだけでもリテラシーを高めるにはどうしたらいいか」をお話します。…これです!

ジャーナリズムの5大原則。これを頭においておけば、いきなりリテラシーが高まります。

①バイライン(署名)は、誰が書いた記事なのか明らかにすること。
②ソース(情報源)は、誰によって得た情報なのかを書くこと。
③クレジット(引用・参照元)どこから情報を引用したか、参考にしたかを書くこと。
④コレクション(訂正欄)間違えたら訂正すること。
⑤オプエド(反対意見)反対意見・異論も載せること。

これをきちんとやれば、メディアは一気に変わるし、見る方は「これが全部できていないメディアはちょっと眉唾だよ」と思えばいいんです。1項目20点とすれば、海外メディアはだいたいどこも100点が当たり前。でも、日本は0点が当たり前…この差は大きいでしょ。皆さんはこの5大原則を頭において、「このメディアは何点か」を見ていけばいいんです。

この中で、今日は④と⑤をくわしく見ていきましょう。まずコレクション、訂正欄ですね。日本のメディアは、大きく間違えても、訂正する時はちっちゃくしか出さないんですよ。わかんないように。「これじゃわかんないでしょ!」と言うような出し方しかしない。これが何かというと、日本の新聞・テレビは「正しいことを教えましょう」というスタンスなんです。そうでしょ?

【宇都宮】
そうですよ。「テレビが言ってるから正しい」ってみんな言いますよね。

【上杉】
でしょ?あれは世界的に言うと「大丈夫か?」となるんです。「日本の常識は世界の非常識」ということがあるし、逆に「日本の非常識が世界の常識」もある。

日本では「新聞報道は正しい」という前提だけれども、海外でジャーナリストが「正しい」という言葉を使うと怒られます。僕がニューヨーク・タイムズに入った時こう言われました。「ジャーナリストごときが『正しい』なんて言うな。神でもない限りそんな驕ったことは言うな。我々は『正しい』報道を出すんじゃない。もちろん自分が『これが正しいんじゃないか』と思ったことを書くんだけども、それを『正しい』なんて絶対的な価値観で言うのは驕りだ。人間は間違える動物なのだから、人間が作る新聞もテレビも、間違えることは避けられない。間違えないことよりも重要なのは、『ミスを認める謙虚さ』だ」と。この「謙虚さ」が何かというと、コレクション(訂正欄)なんですよ。

では実際にその訂正欄を見ましょう。これです。

右側がWeb版で、左側が紙面。1日でこんなにいっぱい間違えてるんですよ。間違いだらけ。僕もニューヨーク・タイムズに入った時びっくりしたんですよ。当時の支局長に言いました。「大丈夫ですか?ニューヨーク・タイムズは」と。そうしたら、「何を言ってるんだ?人間は間違える動物だ」と、さっきの言葉を言われました。そして「どうしても『間違いをごまかしたい』という誘惑にかられる。でも、一回でもその誘惑に負けて、ごまかして嘘をついたら、君のジャーナリストとしてのキャリアは終わりだ。でも間違えた時にすぐ訂正すれば、読者にそれが伝わる。そのためにコレクションが用意されている。それでいいんだ。『私達は正しい』と言ってしまったら、それは驕りだから、絶対にダメだ」と。

でも日本では「正しいことはなんでしょうか」なんて言ってるでしょ?…元NHKの子どもニュースの人が。あれはダメなんですよ。ああいう驕ったことを言っちゃダメ。みんな間違えるんだから。

ニューヨーク・タイムズのコレクションの最たるものを見てみましょう。驚きますよ。これです!

2014年3月4日のコレクション。さて、このコレクションはいつの記事の訂正でしょう?

【宇都宮】
え!?1853年って…!?

【真白】
生きてねえよ(笑)。

【上杉】
そう、160年前の訂正をするんです。ニューヨーク・タイムズができたのが1851年だから、創刊2年後に書いた記事に間違いを見つけたんですよ。間違えたのは「当時いた黒人奴隷の名字のスペル」。「申し訳なかった」と160年前の訂正をしているんです。「人間はかならず間違える。間違いは素直に認める謙虚さが必要だ」…これを徹底してやっているのがコレクションです。

【真白】
…ということは、アメリカの方々は「報道されていることは絶対正しい」という幻想はないということですね。

【上杉】
ない。まさにそのとおりですね。

【宇都宮】
一般の人達もですか?

【上杉】
日本だけでしょ?新聞に対する信頼度が70〜80%なんて…北朝鮮じゃないんだから。でも北朝鮮の人たちは、新聞に書いてあることが違うなんて言ったら殺されるから、信頼しているふりをしているだけ。でも日本人は本当に信頼しているんです。これが日本人のリテラシーの低さの最大の原因です。アメリカ人は30%ぐらいでしょ?新聞に対する信頼度なんて。

アメリカ人は小さい頃からこういう新聞の訂正欄を見てるから「世の中の情報は正しいことも間違ってることもあるよね」とわかってる。でも日本では一度間違うと「ほら見ろ、デマだ、あいつは嘘つきだ!」となる。アメリカはならないです。「彼も人間だから間違えることもある。でもこっちの記事はいいよね」と情報の中身で判断する。

記者クラブ制度の中では間違ってはいけないんです。社内の傷になり、出世できなくなるから。海外のジャーナリストは全員契約ですから。日本の新聞記者は社員なので、失敗すると取り返しがつかなくなるので、ごまかすんです。海外の記者は正社員がいないから。

【宇都宮】
結局、保身ってことですか?

【上杉】
そう、保身。記者クラブ制度がなくなれば、こういうのもなくなるんです。こういうコレクション(訂正欄)は日本では導入できないんですよ。「私達は正しい」っていつも言ってるから。

〜中略〜

【宇都宮】
そう言われると真実が何なのかが、もはや分からなくなってしまう気がするんですけど…。

【上杉】
この世の中には、「絶対に正しい」というものはありません。多様な意見があって、それぞれが「合理的だ」と思ったものを情報として取りなさい、と。「多様な価値観、みんな違って当たり前」…そこからメディアっていうものは生まれてるんですよ。メディアはその多様性を作るのが仕事なのに、日本では「正しいこと」を見つけに行くから、自分たちと違うものを排除するんですよ。そうすると、これが独裁の始まるきっかけ。一元化するから。戦前もね。

元々全世界に記者クラブはあったんです。それが今、なぜ日本だけ残ってるかというと、コントロールしやすいから。「新聞報道は正しい」「公正中立」「客観報道」…こんなことを言ったらアメリカでは「お前はバカか」と言われます。「お前は神か?何の立場だ?」と。

海外の報道の常識は「新聞が正しいは”驕り”」新聞がやるべきなのは「多様性・反論権」の確保。要するに「自分だけの意見が正しいと思うな」ということ。「多様な意見があって当たり前なのに、なんで新聞やテレビ、ジャーナリストごときが『私たちは神の目を持っていて、正しいのです』と言わなくちゃいけないんだ?」と。

このような報道は日本だけです。記者クラブがあるからそうなる。韓国では2003年に記者クラブが無くなりましたが、2008年に盧武鉉のあとに大統領になった李明博さんが、記者クラブを復活させようとしたんですよ。権力としては一元化してメディアを敵に回さずコントロールしやすいから。でも、韓国の国民が皆反対したんです。記者クラブがなくなって、いろんな情報が入るようになったから。記者クラブになるとまた情報が一元化されてしまいます。人間は「知らないことを知る」事はできるけど、「一度知ったことを知らない状態にはできない」でしょ?韓国の人たちは知っちゃったんですよ。「多様性がある方が健全じゃないか」とね。

もっと言えば、アメリカでは1920年代に記者クラブは崩壊してます。記者クラブの縛りで「これは来週まで出すな」ということになっていた情報を、ウォールストリート・ジャーナルが無視して出したんです。「読者の利益になるから」とね。そうしたら、ウォールストリート・ジャーナルは記者クラブから追放されるわけです。でも読者はそっち(WSJ側に)についたんです。それで各社が「そうだ!」となって記者クラブは終わった。神領さんのマガジンXは、まさに100年前のWSJのようなことをやっています。でも、日本では記者クラブのほうが強いから、そっちについていかないわけですよ。政府に脅されちゃって。読者・視聴者よりも、自分たちの生活が大事だ、というわけです。

〜中略〜

コレクション(訂正欄)がちゃんとできていないとどうなるかというと、こうなっちゃうんです。

これはオバマ前大統領の演説。「私は海兵隊の沖縄からグアムへの移転を推進するという約束を再確認した」と言っていて、通訳もちゃんと「沖縄からグアムへ」と言っているのに…。

【宇都宮】
「普天間から辺野古へ」と報道されたんですよね。

【真白】
…と言うか、これは意図的ですよね。

【上杉】
これは訂正はされてるんだけど、一面で報じたものを中面でちっちゃくしか訂正しないので、みんな知らないんですよ。

結果、日本ではこのオバマ大統領の発言は、嘘の方が信じられてる。「これでは戦前と一緒ですよ」ということを言いたいんです。

次に⑤のオプエド。これは番組の中でもやっていますけど…。

ニューヨーク・タイムズのオプエド欄がこれ。

これは古賀茂明さんが書いたものです。最初はオプエドは「社説の裏面に違う意見を載せる」と言うものでした。それが発達して、社説とは違う意見を自社の記者も書けるようになりました。そして「書かれた人が反論できるようになった」のです。日本だと書かれっぱなしでしょ?真白さんもそうでしょ?

【真白】
書かれっぱなしです。

【上杉】
小沢一郎さんもそうでしょ?でも全世界のメディアはオプエドを導入してますから。日本だけですよ、オプエドがないのは。要するに「この世にあるのは唯一つの意見だけじゃないんだ」と。日本だと「社説に書いてあることは正しい」となるでしょ?でも、海外では「俺の意見は違う」と書けるわけです。

一つ例を挙げると、ニューヨーク・タイムズで2002年か3年にジュディス・ミラーという「中東関係の記事を書かせたら天下一品」という評価を受けていた記者が「イラクには大量破壊兵器がある」と書いたのです。その後パウエル国務長官が国連の演説で「イラクには大量破壊兵器がある」と言って、2003年の3月20日にイラク戦争が始まるのです。それにはジュディス・ミラーの記事も大きな影響を与えたと言われてるんだけど、その後にニック・クリストフという記者が「大量破壊兵器はない」と書いたんです。…両方共ニューヨーク・タイムズの記者ですよ。日本だったら混乱するでしょ?でもアメリカでは70年代からオプエドが定着してますから。その後も色んな意見が出て、ニューヨーク・タイムズのオプエド欄で大論争が巻き起こったのです。

結果的には2004年になって「大量破壊兵器はなかった」とわかって、イラク戦争は誤りだったという事になってアメリカは謝罪しました。…でも、日本政府は謝ってない。まあ、日本はいいんですよ。政治も行政もメディアも遅れてるから、これが変わるのを待っていたら、皆さん置いていかれるんで、今日は皆さんにオプエドのことをお教えしてるわけです。

で、ニューヨーク・タイムズのオプエド欄の論争ではニック・クリストフが勝った。でもニックはその時、5原則のうちの「②ソースを明らかにする」ことができなかったんです。それはなぜかというと、明らかにすると殺されるから。後になってわかったのは、アメリカの駐ガボン大使の奥さんがCIAのエージェントで、ニックは彼女から聞いたんです。

【真白】
じゃあCIAは大量破壊兵器はないということを知ってたんですか?

【上杉】
知ってたんです。

【真白】
じゃあ…嘘じゃないですか。

【上杉】
そう、嘘だとわかっていたけど、戦争したかったんですよ。でもそれは本当は新聞が止めなくちゃいけなかった。…でも、オプエドがあったために、この話は後に「フェア・ゲーム」という映画になりました。アメリカ人は「ものの見方は色々ある」ということを知ってたんです。「大量破壊兵器があった」といまだに思っているのは日本人だけですよ。

「人間は間違えるものですよ」「社会は多様な意見で構成されているんですよ」この二つを知るだけでも大きな学びでしょ?メディア・リテラシーだけでなく、社会的にも。しかもオプエドは単に反対意見を載せるだけじゃなくて、「書かれた方に自分の意見を載せる権利を与える」ということになった。先程の古賀茂明さんの記事もそうだし、オバマ元大統領でさえ、オプエド欄に記事を書いてる。この「反論権を持たせる」ということは日本のメディアにはないでしょ?いろんなメディアにこのオプエド欄を作ってくださいと言ってきたけど「できない」と。それは「私達は正しいです」言っちゃってるから。だから仕方ないから、「ニューズ・オプエド」を作ったんです…4年前に。

今日話したかったことはこのジャーナリズムの5大原則、

①バイライン(署名)は、誰が書いた記事なのか明らかにすること。
②ソース(情報源)は、誰によって得た情報なのかを書くこと。
③クレジット(引用・参照元)どこから情報を引用したか、参考にしたかを書くこと。
④コレクション(訂正欄)間違えたら訂正すること。
⑤オプエド(反対意見)反対意見・異論も載せること。

これが世界の常識で、日本だけが逆ですよ…この感覚を持ってメディアに接しないと、間違いを犯しますよ、ということです。

【宇都宮】
なるほど、分かりやすかった!今話した内容は、このオプエド本にも色々書かれているわけですね。

【上杉】
そう…あれ、表紙が変わっちゃってんじゃん!(笑)

【宇都宮】
上杉さんの顔が獅子舞になってますが(笑)、「真実を知るための異論・反論・逆説」ということで…オプエド、いい番組ですよねえ。

【上杉】
オプエドには右も左も、上も下も、色んな人が出るでしょ?こっち側の意見の人が出たら、必ず反対側の人も出る。一つの意見しかないなら、オプエドはいらないわけですよ。それで議論の幅と、社会性、リテラシーの幅を広げるわけです。

この5大原則を導入してたら日本のメディアも健全になってたんだけど、できない。20年間言ってきたんだけど。

【真白】
この先はできるようになりますかね?

【上杉】
できないでしょう。でも、誰かにやってもらうより、自分たちでやったほうが早いんで。

〜中略〜

【上杉】
日本のメディアは自分たちがアンフェアで卑怯なやり方をしているということを自覚できない。だから読者・視聴者のほうがこの5大原則を身につけて、メディアに点数をつけて見るようにすれば、まともなメディアか、そうじゃないかが見分けられるようになります。そうやってリテラシーを高めましょう!読者・視聴者の力がつけば、良いメディアは残るし、クズメディアは消えていくでしょう。

※本記事は2018年1月6日に配信された番組の内容をテキストでまとめたものです。省略している部分もありますので、番組全編は是非Youtube配信チャンネルでご視聴ください。この回はどなたにでも無料でご覧いただけます。


【お知らせ】

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「上杉隆のザ・リテラシー」2月以降の配信は、現在すでに募集が始まっている第4期クラウドファンディングの対象となります。番組後半はクラウドファンディング支援者向けの限定配信となりますので、下記サイトからぜひ御協力をお願い致します。

来月のザ・リテラシーは2月3日土曜の配信です。ゲストはIWJ代表の岩上安身さん。どうぞお楽しみに!